やっぱりボアアップ

カテゴリ: V100エンジン — 2013/02/05

トップスピードや、ピーキーなエンジン出力は必ずしも必要ではない。

一番肝心なのは耐久性です。遠出した先での深刻なエンジントラブルは絶対に回避したいところ。
そして何時、如何なる時でも安定して運用できる稼働率の高さ、これが重要項目です。そのためにエンジンを極端に回すようなチューニングはしないことにして。
それでも登坂性能は重要であり、バイパスのような道を80Km/hで巡航できる安定性も求め、加えて追い越し加速性能も必要だが、燃費は犠牲にしたくないわけです。
これらを総合的に判断したとき、エンジンを回さずにトルクを太らせるためにはボアアップが一番の近道ということで、コストを重視して、安価に出回っている台湾製のシリンダーを組んでみることにしました。


しかし、最初のシリンダー(1号)は手にした時に唖然としました。スリーブがねじれて、少し回転した状態で組み込まれているのでした。その曲がった状態のままでスタッドボルトの4箇所の穴が加工されているので、元に戻すことは不可能です。

当然ながら各ポートの穴も、ずれている状態で、要するに不良品だったのですが、まっ、どうせポートを削る予定だったのでこれでやってみようということに。。

排気ポートは、ずれている分も含めて横に拡大し、高さはノーマルよりもかなり低かったので、ノーマルのポート高さと同じまで削って。掃気ポートもそれぞれ横に拡大。
組んでみると、低回転のトルクは出てましたので慣らし運転中は期待が持てましたが、慣らしを終えてのインプレッションは、回らない。。。メーター読みで80ちょっとで頭打ちになってしまいます。やたら肉厚のピストンの重量がかせになっているという意見も聞いたことがあるし。
とにかくポートの穴が控えめなので効率が悪そうです。
その後幾多の修正&失敗を経て、焼付きも経験して、1号シリンダーは敗退。。。(ボアアップしたらオイルポンプを調整してオイル供給量を増やす必要があります)

で台湾2号を入手して、さらに挑むことに…


これもよーく見るとアルミの本体に対して、スリーブの圧入が不十分のようで、ヘッドとの合わせ面の下側に僅かな隙間があり、不安にさせるのでしたが、(ナーバスになっているだけかも)。
排気ポートは幅を十分に取って、掃気ポートも拡大すると共に鉄スリーブとの段差を丁寧に削って、滑らかな混合気の流れとなるよう注意を払いました。スリーブ下側のスカートの切れ込み部、吸気・掃気ポートにつながる部分も斜めに削ってみました。

しかしこちらのセットは、ピストンの品質に泣かされることに。
しばらく運用していると、じきに減速時に妙な異音が出るようになり、それが次第に大きくなってきて。スロットルをガバと開けた後、オフにする時のほんの短時間ですが、何かが暴れているような金属音が出るのです。
バラして点検してみると、ピストンのボス部が異常磨耗しており、ピストンピンとのクリアランスが異常に大きくなっていました。
それでスロットルを開けてるときの燃焼圧力から解かれて、エンジンブレーキのポンピング圧力でまた押さえられるまでの僅かなタイミングで、ピストンが暴れていたのかもしれません。
ピストンピンの品質が悪かったのか、その加工精度の問題だったのかは定かではありませんが、ともかく、ピストンは交換。

JCCというメーカーのピストンをたまたま入手しましたので、比較してみました。
表面処理がなされており、アルミのテカテカした輝きはありません。肉厚も薄く、上手に鋳造されていて、かなり造りの良いことが見て取れます。写真でも肉厚が薄いのが一目瞭然だと思います。
早速これで組み立ててみると、これで万事うまく行ったのでした。
本来は加工精度の誤差で微妙に異なるピストンのサイズに合わせて、クリアランスが0.04mm程度になるようシリンダーをボーリングするのが正しい腰上O/Hのやりかたなので、こんないい加減な組み合わせ方で心配もありましたが、そこはさほど問題では無かったです。

激しい力を受けるピストンピンも大事なパーツ。
写真は左から、スズキ純正、JCCの付属品、そして今回問題を起こした台湾2号の物です。
よくよく見ると、問題を起こしたピストンピンは穴が偏芯しているようにも見えます。測定したわけではありませんが、少なくともそう見えるということは、面取りはおかしいと思います。
ここは純正品が安心して使えますので、
JCCのピストン+スズキ純正ピストンピンという組み合わせを採用しました。
この組み合わせで、この後40,000Km以上を問題なく走ってくれたのでした。

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