燃料切れ警告灯
タンク内のガソリンを使い切れるか?
走行中にフェールゲージの針がEラインを振り切り、まだ少し走れるはずと思いながらもハラハラしたことはないでしょうか。
トリップメーターのないスクーターにとっては、ガス欠寸前を教えてくれるような機能が必要だと思いました。
仕様としては、ガソリンセンサをタンク出口に設置して、タンクが空になった時点でLEDの警告を出します。タンクが空になってからも、ホースとキャブに残っているガソリンでのみで何キロかは走れるはずです。そのタイミングが最後の給油のタイミング。これでタンクの燃料をフル活用して最大限走り続けられますし、点灯しないうちはまだ走れる、という心理的な安心感が得られるのも大きいです。
そんな究極のエンプティセンサの開発のエピソードです。
カギとなるのは検出方法ですが、小さなフロートをパイプ内に組み込んで磁気でセンシングするとか、ホース中の羽根車を光でセンシングして流体検出など、いくつかプランを考えましたが、ふとした思い付きでシンプルで安全な方法を見つけて解決することができました。ガラス管内部の光の屈折を検出するというものです。
この写真ですが、コップの裏側のLED投光器から光が直進して通過し、光っているのが分かります。
これに水を入れると、光が屈折してしまい真正面からは見えなくなります。この変化をフォトインタラプタを使って検出するというアイディアでセンサー開発がスタートしました。
最初は対向型のフォトインタラプタでガラス管をはさみこんで検出しようとしました。実験回路ですが、一応目標とする動作はしたものの、どうしてもセンサ部分が大きくなってしまいます。実装するにあたって、どのように収めるか、頭を悩ませるところです。ちなみに、赤外線のフォトインタラプタの発光部は、デジカメのモニターで見れば光っていることを確認出来ます。
これで赤外LEDが生きているか、駆動回路が正常か、などの判断の目安になります。
検出部はフェールホースを分断して、その間にガラス管を使ったセンサを組み込むわけですが、ガラス管はどうしたかというと、普通サイズのガラス管ヒューズを流用しました。ガスコンロで金属部分を暖めると、接着剤が溶けて動くようになります。こうして両端の金属キャップを外してガラス管だけを取り出すことができます。ガラス管の外径は5.8mmあります。
ホースは内径5mmのものを使います。
たくさんの試作品を作りました。
センサは、最終的にはごく小さな反射型(TPR-105)で、十分な性能が得られることを発見しました。これはコップの水の実験とは少々違う原理になりました。
反射型フォトリフレクタから出る赤外線は、管の中が空のときは、ガラスの内径部分で空気との密度差により反射し、ガラスの厚み分だけで往復して検出されONになります。ガラス管内部に液体が満たされると内面では反射せず、光線がより奥まで直進して検出されないので、OFF状態となります。
この仕様で作り込み、精緻を極める作業でセンサは完成したのですが、設置場所には一工夫必要でした。
負圧コックより下流のキャブに繋がるラインなら、万が一ガラス管が割れた場合でもエンジンを切って負圧コックが閉じればガソリン流出が防げます。それで最初は安全上の観点からそこに設置したのですが、実際に動作させてみると、この位置ではホース内に抜け切らない空気の泡が常に存在していることが発覚し、頻繁に点滅を繰り返すだけの不満足な結果に終わりました。それで最終的にはタンク出口と負圧コック間にセンサを取り付けることになりました。
古いホースは硬化していることがあります。硬化したゴムに無理してガラス管を通そうとすると割ってしまいます。また、この部分のホースは特殊でガソリンタンク側の内径が6mmに対し、コック側内径が5mmとなっています。それで純正部品を注文して、新品のホースを思い切って真ん中で切断し、その間にエンプティセンサを取り付けました。
ホースインレット:44199-41D10
これで動作は完璧になりました。点灯してからどれだけ走れるかを把握するため、ガス欠になるまで走るという実験をしてみました。燃料計はEを振り切り、貼り付いた状態。
するとまず加速時の液面の変化に反応してチラッと点灯するようになりました。そのまま走ると、やがて点灯しっぱなしになり、そこからは2~3キロが安全圏内ということが分かりました。
実際には荒業で車体を左右に揺さぶると、落ちづらくなっている最後のガソリンまで使えるので、その方法でもっと走ったこともあります。これを装備してからは、燃料計の針が振り切ったとしても落ち着いていられます。
後日、ツーリングモニタを装備してトリップメーターが使えるようになったので、頭の中で計算した航続可能距離と合わせて的確な給油タイミングを計ることができています。
なお、エンプティセンサの 増幅とLED点灯のための回路はメーターユニットの項目で紹介しています。